2011年5月8日

響きのいい声

 まず「響きのいい声」だが、実際に響きのいい、通る声の分析をしてみると、
アナウンサーなどのしゃべる声の場合、三~四キロヘルツ付近がよく共鳴してお
り、オペラなどの歌唱法では男性で二・四~三・二キロヘル
ツ付近、女性はもう少し高い部分に美しい共鳴が現れる。ではどうしたらそうい
う共鳴を出せるのか。簡単にいえば「喉の力を抜いて、お腹の方から声を出せば
いい」のである。
 な~んだそれだけ……という声が聞こえそうなので、もう少し専門的に言い換
えれば、喉頭蓋という、声帯の上部を覆っている軟骨を、適度に開いてやること
が必要である。、人間の喉から口にかけての構造図を下に掲げておくが、それぞ
れの部分が独特の働きをもっているのだ。
 喉頭蓋は自在に動かせるというものではないし、口の構造も生まれつきのもの
だが、訓練である程度の自由度は生まれる。また喉が緊張すると、喉頭蓋は倒れ
やすいので、まず喉をリラックスさせてやりたい。舌の運動も役に立つ。口を開
けたまま、舌先を前歯の裏に当てて、舌を上下させたり、舌を出したり引っ込め
たりすると、喉の奥が開くのが分かるだろう。スプーンなどで軽く舌を押さえて
発声してみるのもよい。その状態でいろいろな声を出してみて、最も響きのいい
のが先程の三~四キロヘルツ付近の音だ。この響きが出るときの舌根の位置を覚
えておくようにするとよい。

城生伯太郎(じょうおはくたろう)『話し方の特法則』(同朋舎、1997)p.
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