紙のケータイ小説本は豪華です。おおむね一〇〇〇円前後という若い世代にも購入しやすい価格帯に設定してあるにもかかわらず、ほぼすべてがハードカバー。ケータイ小説を刊行した経験のある私の友人の編集者はこう説明してくれたことがあります。
「初版六〇〇〇部くらいからスタートする通常の書籍だと、ハードカバーにするには価格を一六〇〇円ぐらいにしないとコストを吸収できないんですよ。ハードカバーで一〇〇〇円で出そうとすれば、初版二万部近くは売れないとペイしない。でもケータイ小説はたいてい初版五~六万部ぐらいからのスタートなので、ハードカバーでも全く問題ないんです」
佐々木俊尚 「電子書籍の衝撃~本はいかに崩壊し、いかに復活するか~」