2010年10月19日

情報の需要と供給

 情報の量を需要と供給で考えてみると、かつては供給(情報を供給する側)が新聞・テレビ・雑誌・ラジオ・本に限られていて、需要(人々が情報を求める気持ち)をカバーしきれなかったので、供給のメディア企業に「情報を与えてやる」というパワーが生まれました。これが余剰の富となって出版社や新聞社、テレビ局の社員の高給にもつながっていたわけです。
 ところがインターネットが登場し、情報の供給はものすごい勢いで増えました。ブログや掲示板などの読み物だけでなく、ツィッターやSNS、メールなどの双方向的なメディアも人々の需要を満たす存在として台頭するようになってきます。そうなると情報の需要と供給のバランスは完全に崩れ、いまや需要を上回る量の供給があふれるようになってしまったわけです。
 そうなれば「需要を絞る」ということによって余剰の富を得ていたメディア企業が没落していくのは当然のことです。それなのにいまだにメディア企業の側には「情報をオレたちが分け与えてやる」という古い発想の年配社員がいて、その頑迷固陋ぶりには幻滅するばかりですがーー。

佐々木俊尚 「電子書籍の衝撃~本はいかに崩壊し、いかに復活するか~」
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