ケータイ小説の読者は、自分の好きな小説が書籍化されると、ひとりで四冊購入すると言われていました。ケータイ小説サイト最大大手の「魔法のiらんど」プロデューサーの遊佐真理さんから聞いた話です。一冊は自分が読むため、二冊目は自分の部屋に飾っておくためのもの、三冊目は保存用で、四冊目は友人に貸すための在庫だそうです。遊佐さんは私にこう話しました。
「彼女たちにとっては、ケータイ小説は、ケータイ電話で気軽に読むコンテンツとして存在しているんです。だから印刷されて書籍になったものは、『読むコンテンツ』というよりは『宝物』的な存在。宝物を購入し、さらにその購買行為によって、自分の好きな作家さんの夢を支えてあげようという気持ちにもつながっているんですよ」
佐々木俊尚 「電子書籍の衝撃~本はいかに崩壊し、いかに復活するか~」