2011.5.24 11:55
24日に営まれた俳優、長門裕之さんの葬儀。お別れにのぞんだ女優、黒柳徹子さんの弔辞全文を紹介する。
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長門さん、あなたは最後の12時間に及ぶ大手術のあと、けろっと直って、私に「元気で長生きしようね」っていったじゃない。そのあなたに弔辞を言うなんて悲しいけど、喜ぶだろうって津川(雅彦)さんが言うから、お伝えしますね。
シェークスピアは人生は芝居だ、芝居小屋だといいましたが、あなたの一生を考えてみると、本当にそうだと思ってしまいます。みなさん十分ご存じだけど、天才子役から映画スター、数々の賞、テレビ…。あなたにはいつでも、光が当たっていました。
あなたと知り合ったのは、あなたが南田洋子さんと婚約をした時。私が洋子さんと抱き合って、よかった、よかったとはしゃいでいた姿を忘れないとおっしゃった頃からだから、本当に長いお友達。
だから、洋子さんが病気になった時、真っ先に「徹子の部屋」でそのことを話してくださいました。てっちゃんだったら、洋子も話して構わないと言うと思うと。なぜ、公表したのかと言う方もいたようだけど、一つは認知症のことをもっと世の中に知ってもらいたい、もう一つは車いすでたまには外の空気をすわせてやりたいと思うけど、どうなさったんですかと質問されて、それに答えるのは洋子に一番かわいそう、だから公表してしまえば、説明しなくていいからというのが、理由だったんです。
それにしてもあなたにはよくだまされました。私と津川さんはオオカミ少年とか、嘘つき兄貴とか呼んでいたんだけど、徹子の部屋で僕は腸のガンらしい、手術するけど、もしもの時はこの本番が追悼になるねというから、あたしは本番なのにあなたの手をとって、だめそんなこといっちゃといって泣きました。
それからちょっとして会ったら、ごめんこの間の手術って、5分で終わっちゃってさって。ポリープとガンの区別がついていなかったんだよって。それから、いっぱいそういうのがあるんだけど…。
とにかく、過ぎたことは全部忘れて、前しか見ていないからって。
洋子さんの介護の時が生まれて一番楽しかったって。幸せそうに話してくれました。あなたの無邪気な笑顔がすてきでした。
でも一度、ほんの一瞬だけど、2人で死んじゃおうかと思って、洋子さんにそう言ったら、そんな話を分かるはずないのに、真っ正面から洋子さんが長門さんを見て、そりゃあだめだよってそう言ったって。
幸せだといいながら、あなた、泣いてた。
洋子さんが亡くなってからあなたは絶望的だった。突然あなたは、一目散に洋子さんのところにいってしまった。
洋子さんはあら、やっと一人になったのに、もっとゆっくりしてくればいいのにって言ったと思う。
でも、スターだったあなたは、誰にも迷惑をかけないで、まるでマジックのように消えた。津川さんの4本目の映画に出るよって言っていたのに。
私たちは美しいおしどり夫婦がいたことを忘れません。面白いことたくさんありがとう。素晴らしい兄弟愛を見せてくれて、うれしかった。
じゃあね。いつか会った時またね。ごめんなさいね。長くなってしまって。いつものことだけど。
あなたのこと、大好きでした。
黒柳徹子
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