2011年4月20日

奄美大島のアダムとイブ伝説

奄美大島の中村喬次氏の採集による奄美の宇検村の伝承である。
 大昔、マジン(ハブ)には翼があったという。島には赤い実のなる木が生えていた。天の神が人間たちにその実は毒だからぜったいに食べてはいけないと禁じていたのに、マジンがとんできて、ある夫婦に「その実には毒なんかない。食べるなというのは、天の神が独り食いしたいためだ。食べろ食べろ」とそそのかした。まず女が食べた。おいしかったので、次に男が食べると、うまくノドを通らず途中でひっかかった。これを見た天の神様はたいへん怒って、男には「おまえは一生、その実をノドにかからせ」といい、女には「おまえが子孫を生むときには、うんと苦しむ」と罰を下した。それで男にはノドガメ(喉仏)ができ、女はお産に死ぬ苦しみをなめるようになった。

谷川健一「わたしの『天地始之事』」147