もともと小説のような文学は、ひとりの孤高の作家がみずからの内面と向き合い、みずから作りあげた世界観と哲学を世間に問うという行為でした。しかしソーシャルメディアに向かって開かれたケータイ小説という装置は、書き手の側も、読み手の側も、自分たちがひとつの「空間」を共有していると信じ、その『空間』に寄り添うかたちで小説を新たなかたちへと展開させていくことを実現しているのです。
つまりはソーシャルメディアによってコンテキストを共有し、そこで描かれていく本は、人々の集合的無意識をすくい上げる文化的な新たなしくみともなっていくのです。
佐々木俊尚 「電子書籍の衝撃~本はいかに崩壊し、いかに復活するか~」