2012年12月22日

老子の理想国家

「老子」第八〇章

私は国境のない世界を願っているが、
まだ無理のようだから、まあ
自分の理想とする国を、描いてみよう。
私の大切にしたいのは
大きな国でも強い国でもないよ。
ほんの小さな、まあ、
村落の集まりのようなものだ。
人口もごく少ない。
住民たちは、
いろいろの道具を持って入るが
ろくに使おうとはしない。みんな
命をとても大事にするから
危険な旅なんかにでない。
舟や車は持ってるんだが、ほとんど
乗らないってわけだ。同じように
武器もちっとは備えているけれども
誰も使わないし
商取引をするには、ただ
ごく単純な数え方ですます。


それでいて
食事はゆったりと、おいしい物を食べ
着るものは美しい上等な服、
日々は安楽であり、
習慣を乱そうともしない。
隣の国は近くて、
犬の吠える声や鶏の鳴く声が聞こえるほどだが、
そんな隣国とも往来しない、
そして、ずいぶん歳をとってから
静かに死んでゆく。

加島祥造「タオ」

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