文字は有機的な道具

あるとき、人間は文字を発明しました。書くという行為は、手の仕事の延長線上にあり、そういう意味ではほとんど有機的な行為といえます。身体と直結した伝達技術です。ひとたび編みだしたら、なしでは生きられません。・・・車輪を発明したのと同じようなことです。現代の我々にとって車輪は、先史時代の車輪と同じものです。いっぽう、我々が近代になって発明した映画やラジオ、インターネットは、有機的な道具ではありません。

ウンベルト・エーコ、ジャン＝クロード・カリエール「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」