2011年6月22日

出版当時酷評された名作

「もしかしたら私の能力が少し足りないのかもしれないが、誰かが眠れなくて輾転反側する様子を語るのに、どうして三〇ページも費やす必要があるのか私には理解出来ない」これはプルーストの「失われた時を求めて」についての最初に書かれた書評です。メルヴィルの「白鯨」に対する評価は「このような著作が若い読者の興味を惹く可能性はまずないだろう」というものでしたし、フロベールは、「ボヴァリー夫人」にかんして「氏よ、あなたは、描写は完璧だが無意味な細部の寄せ集めでご自分の小説を埋もれさせてしまった」と言われています。エミリー・ディキンソンは「韻の踏み方がことごとくなってない」と言われました。コレットの「学校のクロディーヌ」は「一〇部も売れないだろう」と言われました。ジョージ・オーウェルの「動物農場」は「アメリカでは動物の話は売れません」と一蹴されました。アンネ・フランクの「アンネの日記」は「この子は、自分の本にはせいぜいがらくた程度の価値しかないということがまったくわかっていないようだ」と評されました。

ウンベルト・エーコ「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」
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