2010年11月10日

若さ

 若い頃には、ひとの若さに胸をうたれるというようなことはなかった。中年期に入って、ある日、そういう自分に気がつくのである。若い人の、鈍感や傲慢、頭の悪さに嫌悪を抱きながら、その若さに胸をうたれているのである。自分からはみるみる失われていく若さを、無自覚でいられるほど潤沢に持っているものに、ひそかに心ゆさぶられて目を伏せるというようなことがある。

山田太一 「あとがき」 『夕暮れて』
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