2012年4月26日

写真と時間感覚

現実世界がカメラの眼によって広がれば広がるほど、ますます写真が新しい豊かな世界を「疑似体験」として提示してくれる。写真術の登場によって、人間の空間に対する認識、世界に対する意識が一気に開かれたものとなり、大きく変化していったことは想像にかたくない。
 同時に写真術は人間に時間に対する意識や感覚をも変質させていった。まず「現在」にいながらにして「過去」を見つめる「時間の堆積」の結晶として、そしてついには肉眼で見えなかった「瞬間」を凍結させる新技術が現れた。

伊藤美露「デジタル時代の写真術」p.7
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