2012年3月23日

写真は正直な魔術

(写真は)きわめて独特の美的品質を備えたイメージの担い手である。撮影という行為によって現実の断片をイメージとして対象化する写真機は、印画紙の表面に時間を凍りつかせ、膜のように「死」の匂いと恍惚とを立ち上らせる。幻影化されたもうひとつの現実、あるいは現実の向こう側に透けて見える聖なる世界が、永遠の記憶のようにほのかに立ちあらわれてくる。

写真とは、現実と幻想、瞬間と永遠、見えるものと見えないものが混交一体となって融け合う独特の魔術、きわめて「正直な魔術」なのだ。

伊藤美露「デジタル時代の写真術」p.3
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