2011年9月6日

鮨屋は二十歳になってから

イートインでも持ち帰りでも
くだらんチェーン店が町場の鮨屋を絶滅に追い込んだ。
昔の親は何かいいことがあったときやふいの来客があったとき、
近所の鮨屋に出前を頼むついでに
子どもたちにもひと桶ずつあてがってくれた。
そうして子どもたちの食べる様子を観察したものだ。

好きな種からパクパク食べ始める子、
後生大事に好物をあとに残しておく子、
その様子からわが子の性格や嗜好をつぶさに分析していた。
猪突タイプの子の手綱は引き締め、引っ込み思案の尻はたたく。
こうして親子の情愛は育まれていった。
愚痴になるが、こんな親子はいくらも残っちゃいまい。
あの時代、鮨桶の中には日本人の温もりがあった。
桶の中の小さな宇宙で子どもたちは思う存分、遊泳したのだ。

J. C. オカザワ「生きる歓び」
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