2013年5月28日

山之口貘「兄貴の手紙」

大きな詩を書け

大きな詩を

身辺雑記には飽き飽きしたと来た

僕はこのんで小さな詩や

身辺雑記の詩などを

書いているのではないけれど

僕の詩よ

きこえるか

るんぺんあがりのかなしい詩よ

自分の着る洋服の一着も買えないで

月俸六拾五円のみみっちい詩よ

弁天町あぱあとの四畳半にくすぶっていて

物音に舞いあがっては

まごついたりして

埃みたいに生きている詩よ

兄貴の言うことがきこえるか

大きな詩になれ

大きな詩に

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