2011年6月25日

異端審問とスペイン文学

スペイン文学には、二十世紀の後半になるまで、エロティックな作品が一点もなかったということです。

友人のスペイン人が言うには、彼が子供だった六〇年代、七〇年代に、「ドン・キホーテ」に「乳首(tetas)」という言葉が出てくるのを友だちに教えてもらったそうです。当時のスペインの青少年は、セルバンテスの作品に乳首という言葉が出てくることにまだ驚き、興奮さえしていたんです。

フランスの主要作家は誰でも、ラブレーからアポリネールに至るまで、ポルノ作品の一つや二つは書いています。スペイン人作家にはそういう作品はありません。スペインの異端審問は徹底的な言葉狩りを行っただけでなく、書物も取り締まりました。オウィディウスの「恋の技法」さえ長いこと禁書扱いだったんです。

ジャン=クロード・カリエール「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」
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